ウィルスは感染力が上がれば弱毒化する？

まず、ウイルスには「意思」とか「思考」なんていう物は無いので、自発的に「感染力を上げよう」とか「弱毒化しよう」という事はありません。

そして、ウイルスは自分で増殖する事が出来ません。その為、他の生物に侵入・感染し、感染した細胞の中で増殖します。この際、コロナウイルスでは遺伝情報を伝えていく為にRNA（リボ核酸）をコピーして受け継がれます。ただ、RNAはコピーする際にミスが起こりやすく、このコピーミスが「変異」と呼ばれる物になります。

つまり「変異」は単純にRNAのコピーミスが原因であり、それによって「感染力が変化」したり「毒性が変化」したりします。ですから、変異によっては「感染力が上がって、強毒化」する物も現れます。

しかし、通常の生活において、「強毒性」の変異種に感染した患者は重症化したり死亡したりする事が多い為、感染が広がる前に「病院などで隔離」される可能性が高いのです。その為、「強毒性」の変異種は早い段階で対処されて、感染が広がりにくいのです。逆に言うと「弱毒性」の変異種は無症状だったり、症状を重く見ない感染者が多くを占める為、隔離される事が少なく、感染が広がりやすいとも言えます。

つまり、「ウイルスは時間の経過と共に感染力が弱毒化する方向で淘汰されていく」というのが正しい説明になるかと思います。この「時間の経過と共に...」というのはウイルスの変異速度等によって大きく違ってきます。因みにコロナウイルスの場合、RNA約3万塩基のうち１か所が変異するのに２週間程度かかっていると考えられているそうです。当然、変異しても特徴に大きな変化が見られない物もある一方で、感染力や毒性が変化する物もあるという事になります。

ただ、感染症専門家の中には「コロナウイルスも10年ぐらいすれば、風邪と同じぐらいになる（弱毒化された物しか生き残っていない）」と予測しておられる方もいらっしゃいます。

...と言う事なので「ウィルスは感染力が上がれば弱毒化する」というのは、感染症専門家の人がそう発言したのか、メディアが内容をはし折ってそう書いたのか、はたまた質問者様がその様に読み取ったのかは解りませんが、「間違っていないけど、詳しい内容が省略されすぎ」です。専門家の人が「そんな事は当たり前」として考えておられる事でも、一般人にしてみれば「そんな事知らん」という事が多々ありますね。なので、この様なご質問は「専門家の方が伝えたかった事が一般人には誤って理解される事がある」という良い例だと思います。